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行政書士 アスナ事務所

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【物流出身の行政書士が解説】ドライバーの完全歩合制導入のメリット・デメリット

労務契約

埼玉のほぼ中心東松山市で行政書士をしている田村栄嗣です。
本日は、「運送業・完全歩合制で残業代未払訴訟を回避できるのか?」について解説していきます。

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目次

24年問題とも深い関係がある残業代未払訴訟

当ブログでも何度か記事にしている、運送業の24年問題ですが、この問題の中心は残業時間の上限が年960時間に制限されることから起きる様々な事象のことです。

しかし、その前に、2020年4月から残業代(賃金)請求の消滅時効が旧法の2年間から経過措置として3年間になります。

やがては民法の債権の消滅時効に合わせて5年間に延長されることによる、残業代未払訴訟の頻発が予想されます。

今年、2022年4月から実質、この改正の影響が出始めています。

いずれにしても、仕業と終業をきちんと決めて残業時間を管理するという経営の基本姿勢が問われています。

その意味で、この残業代未払訴訟は24年問題にも深く関係していると言えます。

歩合制を導入するとどう変わるのか?

ここ数年、これらの問題を見越して運送業の賃金体系に歩合制を導入する動きがみられます。

主に、コンサルタントを中心に歩合制、その中でも完全歩合制を運送業に導入するとこれらの問題がたちまち解決するという論調の本なども見受けられます。

それでは、歩合制を導入すると具体的にどこが変わるのかこれから説明します。

●そもそも完全歩合給制は違法ではないのか?
この点、違法ではありません。
ただし、導入に際しては以下の2点を守らなければいけません。

⑴一定額の保障給を設定する必要がある(労働基準法第27条)
これは、労働者の最低限度の生活を保障するためです。

売上0だから給料も0だと言ってしまうと、労働者は生活できません。

期間中に働いていないのならばそれも仕方ないのかもしれませんが、成果は出ずともきちんと
仕事をしている人の生活は守られなければいけません。

それでは、企業は最低どれくらい保障給を払う必要があるのかというと、休業手当の平均賃金に
合わせて少なくとも平均賃金の100分の60程度を保証することが妥当だと考えられています。

⑵支給する賃金が最低賃金を下回ってはならない
これも、⑴と同様の理由で当然の規定だと考えることが出来ます。

労働基準法第二十七条 
 出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。

固定給・歩合給の残業代の計算方法

⑴全額固定給の場合

残業代=(基礎賃金÷所定労働時間)×時間外労働時間×1.25(割増率)

⑵完全歩合制の場合

残業代=(基礎賃金÷総労働時間)×時間外労働時間×0.25(割増率)

完全歩合制の残業代が固定給の残業代よりも安くなる理由は、上の赤字の部分です。

①賃金単価が安くなる
所定労働時間(時間外労働時間抜き)よりも総労働時間の方が長いので、分母が大きくなるため

②割増率が低くなる
なんといってもこれが大きいです。

1.25が0.25になるとなんと5分の1です。

⑶固定給+歩合制の場合
固定給の部分は⑴で計算、歩合給の部分は⑵で計算し合算します。

具体例で見ていきましょう

ここで、具体例として、⑴完全固定給、⑵完全部位給、⑶固定給+歩合給のそれぞれの総支給額をシミュレートしてみましょう。

条件としては、いずれも基礎賃金は30万円、所定労働時間は150時間、残業時間は60時間の場合を扱います。

⑴完全固定給の場合

(基礎賃金÷所定労働時間)×時間外労働時間×1.25(割増率)

=(30万円÷150)×60×1.25

15万円

⑵完全歩合給の場合

(基礎賃金÷総労働時間)×時間外労働時間×0.25(割増率)

=(30万÷210)×60×0.25

2万1,429円

⑶固定給+歩合給の場合(固定給部分の基礎賃金=10万円、歩合給部分の基礎賃金=20万円として計算)

①固定給部分

(基礎賃金÷所定労働時間)×時間外労働時間×1.25(割増率)

=(10万÷150)×60×1.25

5万円

②歩合給部分

(基礎賃金÷総労働時間)×時間外労働時間×0.25(割増率)

=(20万÷210)×60×0.25

1万4,286円

①+②=6万4,286円

⑴と⑵では約13万円の差、⑴と⑶でも約9万5,000円の差と大きな差がつきました。

一人、1ヵ月でこれだけの差なのですから、⑴から⑵移行した場合、1人当たり年間156万円、ドライバーが10人いれば年間1,560万円、支払う残業代が減ることになります。

歩合給制を導入する際の注意点

結果だけを見ると、完全歩合制は運送会社からすると非常に魅力的な制度に思えます。
しかし、早々うまい話ばかりではないのが世の常です。
では、導入に当たってどのような注意点があるの説明します。

⑴ドライバーにいろいろ配慮が必要になる

①ドライバーの個別の同意が必要になる

②減った差額分の保障をするなどの措置が必要

③一定期間、従前の固定給制を維持し、その後に完全歩合制に移行する

⑵デメリット

①ドライバーが売上のある業務しかしなくなる
車の洗浄や駐車場の掃除など売上にならない作業を拒否する可能性がある。

②ドライバーが利益の高いコースばかり走りたがるようになる
荷主や作業内容によって、コースごとの料金は異なります。
すると、料金の安いコースを割当られたドライバーが乗車を拒否する可能性があります。

③ドライバー間で不公平感が出てくる
②で見たように料金の高いコースと低いコースに割当られたドライバー間で不公平感が出てくる可能性があります。

④歩合率を間違えると取り返しがつかなくなる
歩合率を低く設定したものを高くすることはできるが、高く設定してしまったものを下げることは事実上できないものとお考え下さい。
歩合率の設定は慎重に慎重を重ねましょう。

⑶導入した完全歩合制が無効になる場合がある

①雇用契約書と給与明細などの間に食い違いがある。
どこか間違えているかそれとも胡麻化しているのかという疑いがかけられます。

②保障給の割合が高すぎる
例えば保障給の割合が9割などと言ったら、歩合給である意味がないと思いませんか?
これは、残業代を浮かせるために形だけ歩合給制をとった実質固定給制とみなされます。
また、歩合率が不明瞭な場合も同様です。

③ドライバーへの配慮に欠けた導入
上の⑴の事柄がかけている場合、ドライバーに一方的に不利益を課したものとして、無効になる可能性があります。

まとめ

いかがでしたか?

確かに、運送事業者にとっては、非常に魅力的な完全歩合制ですが、導入のハードルは非常に高いものと言わざるを得ません。

もし、運送事業者が強引にこの制度を導入したとしても無効の判定をされる可能性、それよりも、ドライバーが大量に辞めていき会社が回らなくなる可能性すらあります。

もし導入しようとするなら、弁護士、社労士などの専門家に相談をしたうえで実施してください。

完全歩合制に興味のある運送事業者様には、運送業に詳しい社労士をご紹介いたします。

完全歩合制について関心をお持ちの方は、お気軽に当事務所にご相談ください!

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